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2007年度理事長所信
社団法人 北九州青年会議所
2007年度理事長予定者
中柴 崇
テーマ『北九州の魂(こころ)』
〜このまちで生まれ育ってほんとう(・・・・)に良かった〜
はじめに
1977年9月3日後楽園球場、私はブラウン管の中で両手を挙げダイヤモンドを周る背番号「1」の後ろ姿を鮮明に覚えています。
世界を勝ち獲ったアスリートの勇姿は、夢を達成した感動の瞬間でありました。それは、国民を歓喜させ、国民の誇りとなったのです。
当時8歳だった私は、子供ながらに、偉大で、かっこよく、その素晴らしい姿に憧れ、ナボナのお菓子を頬張りながら、丸めた新聞バットでフラミンゴ打法を真似したものでした。
それから30年。日本は高度経済成長、バブル景気と崩壊、IT産業の台頭とさまざまな変遷を経て今日に至りました。その時代とともに成長した私の目に映るブラウン管には、道徳や倫理に反した事件、地球環境の悪化、少子高齢問題、失業率の増加、いじめ問題に象徴される教育問題、そして絶え止まない戦争。そのような報道を見るにつけ、心は痛み、憤りとなります。混迷を極める現代社会だからこそ、私たちは先祖から受け継がれた日本古来の精神文化を次世代に引き継ぐことが必要なのです。子どもは大人になるために「生きる力」を養い、そのために大人は多くの人に心を伝える努力が必要です。しかし、今の大人は心を伝えるどころか、心の大切さを忘れかけているように感じるのです。
北九州に生まれ、やんちゃに育った私も、今では職を得て、家庭を持ち、多くの仲間と出会えるようになりました。私はこの国、このまちで生を受けたことに感謝し、これからもずっと暮らしていきたいと思っています。
北九州青年会議所は、伝統と文化を尊重し育んできた我が国、郷土を愛する心を誇りに思い、このまちの力の源泉を構築するために、市民、行政、企業と連携しながら、地域力の開発に取組み、市民の意識変革運動につとめます。そして、このまちで受け継がれ引き継ぐべき大切な精神文化を『北九州の魂』と称し、このまちで生まれ育ってほんとうに良かったと心から実感できる社会を築く運動を展開します。
真の豊かさの追求
日本は21世紀に入っても経済大国としての地位を確保しています。私たちは祖父母、そして親の世代から物質的な豊かさを享受し、衣食住には不自由なく暮らしてきました。しかし環境や資源に目を向けなかった代償として、22世紀には地球温暖化による異常気象で現在の環境は激変し、人類の滅亡の危機が訪れるのではないかといわれています。
今、日本国民は物質的な豊かさを求めるあまり、地球や人を思いやる心をないがしろにする時代へと向かっているように感じます。私たちは生活し活動していく上で必要な資源は全て自然から得ていることを踏まえ、地球環境を守ることに努めなければなりません。
そのためには心の豊かさと物質的な豊かさがバランス良く融合した真の豊かさを創造することが必要なのです。
心を豊かにするためには、大事なものを守り慈しむ心を養う必要があります。それは家族への愛やOMOIYARIから始まり、生まれ育ったまちへの郷土愛、祖国への愛情、地球を愛する想いへと昇華させることで、地球環境を尊ぶ心が芽生えると思えるのです。そして地球環境を先祖から受け継いだ大切な資産として捉え、次世代へと引き継がなければなりません。
一方、物質的な豊かさを損なうと、心とのアンバランスが生じます。そのためには持続可能な経済発展が必要となります。市民、行政、企業が連携し、文化や歴史を踏まえ、まちの特性を活かしながら、これまで以上に観光や産業を活性化させるべきだと考えます。
北九州青年会議所は真の豊かさを実感できる社会をさらに追求し、光り輝く未来、誇りある未来へとこのまちを導きます。
真の指導力の実践
2006年WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)王ジャパン。予選では敵地でのアンフェアと思われるジャッジで惜敗しました。抗議の申し立てをしない王監督の姿勢に感銘を受けながらも、そのジャッジを遺憾に思う国民の気持ちは収まりません。しかし負けた言い訳をしない指揮官の姿勢で臨んだ決勝戦では、選手達が奮起しアンフェアをものともしないプレーで、観客を賑わせ見事優勝に導きました。この結果は野球を経験したことのない国民にも感動と喜びを与えることができたのです。
どんなに困難で辛い立場でも本質を見極め、信念を貫く。人の上に立つことや教える立場だけが指導力ではなく、人の痛みや引き際を知り、常に矢面に立ち、身を持ってチームを支える役割を担う者が、真の指導力の持ち主だと考えます。家庭や企業では一国一城の主であるJAYCEEは青年会議所の組織の一員としても各々の役割と責任を担っています。ある時はリーダー、ある時はサポートする者として、論理や合理性に囚われない柔軟な行動、的確な対応力、そしてバランス感覚が求められます。さらに日本人らしく礼節を重んじるサムライ魂も日々精進して身に着けなければなりません。
JAYCEEはこのまちを牽引し、このまちのすべての人々に心からの感動と喜びを感じて頂ける活動を実践し、そして、自らは真の指導力を獲得するために修練を続けます。
強いチームの確立
WBC王ジャパンは、「世界一」という目標を掲げ、そのためにチーム自らが、やるべきことを実践しました。それはスーパースターがひしめき合う欧米や中南米の「BASEBALL」とは異なり、バントや盗塁などきめ細かなプレーを大切にし、選手がチームのために献身的なプレーを心がける日本の「野球」に磨きをかけたのです。それが強いチームを創りあげ、「世界一」の栄光を勝ち取ることになりました。
さて、JAYCEEの心をひとつにするためには、確固たる目標と、その目標に向けた明確なビジョンが必要です。
そこで、北九州青年会議所は「2010年度全国会員大会主管ロム」を目標と定め「一致団結 全員攻撃 全員守備」の体制で、全力の活動を開始します。それには常任理事を中心としたライン完結型のコンパクトな組織をつくると同時に、一人ひとりのJAYCEEの意見や想いが反映される会議体の設置と運営を行い、またさまざまなフィールドで「北九州」を発信する出向者の汗と努力を活かした情報発信及び収集システムを構築します。
「2010年度全国会員大会主管ロム」という目標は、私たちが生まれ育った誇りあるまちを全国のJAYCEEへ、さらに広く国民に伝えるために掲げました。このまちや、まちの人々が輝く日は、自分たちの手で勝ち取らなければなりません。心のこもった最高のプレーで日本一強いチームを創り、「北九州」を全国に発信しましょう。
世界恒久平和の実現
日本国民は先の戦争での悲しい歴史を踏まえ、この60年間戦火を交えることなく過ごすことができました。私は知覧特攻平和会館や原爆ドームを訪ね、戦争の悲惨さを再認識しました。しかし世界各地では争いが絶えることなく、現在でも多くの国とその国民が戦火に巻き込まれています。世界平和を強く望む私は、この状況に悲しみを感じ、心が痛むのです。
地球上から戦争をなくし、平和な世界とするための手段のひとつとして、まず世界中の人々が相手の文化や歴史を理解し、尊重し、伝え合うことが大切であると考えています。
JAYCEEは、修練、奉仕、友情の三信条を入会時に学びます。その中に「友情は国家主権を超越する」という言葉があります。姉妹JCとの国際交流は、先輩方から伝えられた国境を越えた恒久的な友情の継承です。
外国語のできない私は「我々はTOMODACHIだ」の合言葉と、互いの心と心をぶつけ合うことで、友情を育んできました。1970年から続く台北JCとの関係を「家族(ファミリー)」と、1988年からの仁川富平JCとの関係を「兄弟(ブラザー)」と言い合えるほど、数多くのTOMODACHIを得ることができ、互いを知ることができたのです。
世界平和を希求するJAYCEEは、TOMODACHIから、さらに一歩踏み込んで、日本の良き伝統文化「日本のこころ」を伝え、理解してもらうことに努めます。同時に異なる文化や歴史を尊重できる心を持つ国際感覚を身につけ、TOMODACHIという友情のキーワードとアジアの玄関という地勢を最大限に活かして、新たな国とも相互理解を深める交流事業を行います。そして、このまちから全世界へ向けて、このまちから発信できる国際貢献活動を模索することで、世界恒久平和の実現を目指します。
最後に‥
本来、このまちには多様で豊かな心がいっぱいに溢れています。
人を気遣う心、礼をつくす心、ものづくりに励む職人気質の心、古き伝統を守る心、人を受け入れる寛容な心。すべてを簡潔に言えば、義理堅く、情に厚い心のような気がします。その心は先祖からまちの力として受け継がれ、伝統と文化のある北九州を創ってきたのではないでしょうか。私たちは今、その心と力をよみがえらせたいのです。そして、このまちの心と力、それを『北九州の魂』として束ね、次世代を担う子どもたちへと永遠に伝えます。
今、私たちは4つの柱に熱い『北九州の魂』の矢を放ちます。
1本目の柱には、真の豊かさ
2本目の柱には、真の指導力
3本目の柱には、強いチーム
そして、
4本目の柱には、世界恒久平和。
この4本の柱が英知と勇気と情熱の炎柱(ほばしら)としてそびえ立ちます。それが光り輝く豊かな社会をつくり、北九州のまちに生まれ育ったすべての人が心から愛し、誇りに思うまちを築き上げます。
「このまちに生まれ育ってほんとうに良かった」
「まずは、やってみようや!」
誇りと夢を失わないために…
テーマ
『北九州の魂(こころ)』 〜このまちで生まれ育ってほんとう(・・・・)に良かった〜
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