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2009年度 活動指針

理事長所信

2009年度 LOMテーマ:『社会変革に挑むカタリストたれ!』〜わがまち北九州への誇りを胸に〜社団法人 北九州青年会議所 第57代理事長 松尾 孝治


はじめに

 「朝顔やにごり染めたる市(まち)の空」
 これはわがまち北九州にゆかりのある女流俳人 杉田久女(すぎたひさじょ)が詠んだ句です。この句に詠まれているように、かつて北九州は重化学工業を中心に発展し、近代国家建国の牽引役を果たした代償に、戦前から公害のひどい「灰色のまち」と呼ばれていました。工場から吐き出される七色の煙が大気を汚染し、廃液の流れ込む洞海湾は大腸菌ですら生きることが出来ず、船のスクリューも融けるほどの恐ろしい「死の海」でした。そんな中、公害による家族の健康被害に悩まされていた戸畑の婦人会が、この環境を改善したいという一心で勇気を持って立ち上がり、被害者と加害者という単純な対立の構図を超えて、立場が違う全ての人たちがネットワークを組み、公害を克服するという奇跡を起こしたのです。私は、彼女たちがその当時のひどい公害の実情を何とか伝えようとして作成したドキュメンタリー映画「青空がほしい」を見たときに、驚愕し、思わず涙を流してしまいました。空を見上げた彼女たちに、このまちの青空を予見することは果たして出来たのでしょうか。成功の保証などなかったことでしょう。それでも彼女たちは立ち上がり行動し、社会全体を巻き込んだ市民運動へと発展させたのです。彼女たちを突き動かしたもの、それは何だったのでしょうか。それは思いやりと使命感です。愛する子どもたちのために、明るい未来を残そうとする使命感が行動へと変わり、未知の可能性を切り拓いてきたのです。私はこの公害に勇気を持って立ち向かった彼女たちこそ、社会に大きな変化を巻き起こした触媒役、すなわちカタリストそのものだと考えます。自らの環境を変革するために、周囲の人たちの行動のきっかけとなるカタリストとして動いたのです。私はそんなカタリストたる先人たちが切り開いてきた、北九州というまちに生まれ育ったことを誇りに想い、この胸の想いこそが、わがまちの未来のために、積極的にまちづくりに関わっていける原動力となっているのです。JCは青年経済人として溢れる行動力と斬新な発想力を最大限に発揮し、地域社会のみならず国家社会の変革をも実現できる無限の可能性を秘めています。先行きの見えない不安で溢れてしまったこんな現代社会だからこそ、私たちJCこそが、社会変革の起爆剤となるべく、力強いカタリストとなって、多くの仲間や市民と共に、夢と希望で満ち溢れた未来への牽引役としてその役割を果たしていかなければならないのです。

 2009年度社団法人北九州青年会議所(以下、北九州JC)は、他人のことを自分のことのように大切に思える、そんな思いやり溢れる社会を目指し、未来の子どもたちのために、すべての市民が、率先してまちづくりの運動を行えるような、そんなカタリストたる市民で溢れるまち北九州にするために、小さな輪から大きな輪へ市民意識変革運動を起こすべく、社会変革に挑むカタリストとして運動を展開します。


地域アイデンティティの確立を目指して

 国の構造改革の推進によって地方分権型社会へと舵が切られ、それぞれの自治体における地域特性に見合った方策が、地方の自律に向けて重要な課題になってきました。しかしながら、地域の未来への方向性を決めるのは国や行政ではなく、市民自らがその方向性を示さなければ、真の意味での自律とはいえません。それには、地域の歴史、風土、文化、自然をひも解き、様々な地域資源を真剣に見つめ直すことが必要だと考えます。そして潜在している地域アイデンティティの確立こそが、厳しい地域間競争に生き残るための方向性を指し示す、大きな旗印となるのです。わがまち北九州は、関門海峡や小倉城などを舞台にした歴史資源、国家の近代化を牽引してきた産業資源、小倉祇園太鼓・松本清張などの文化資源、門司港レトロなどの観光資源、そして豊かな自然、公害克服の歴史から積み重なった環境への取り組み、世界でも類を見ない五市の対等合併の経験など、枚挙にいとまがないほどの誇るべき地域資源を有しています。それらを顕在化することで、すべての市民が自分の住むまちを再認識し、「北九州は素晴らしいまちだ」と自信と誇りを深め、能動的にまちづくりに参画するような、自律したつよい地域社会が実現できるのです。地域の発展を担うカタリストたる北九州JCとして、地域アイデンティティに裏づけされた明確なまちづくりの指針を持つべく、地域社会の主体者として数多くの市民と語り合い共に行動し、このまちの地域資源を掘り起こし広く積極的に発信していきましょう。それこそが、地域の未来を自分たちで創っていこうとする市民意識変革運動の始まりとなるのです。


持続可能な社会の実現に向けた運動を展開しよう

 未来の子どもたちのために私たちが出来ること。それは持続可能な社会の実現に向けた運動を展開していくことです。この持続可能な社会とは、将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在世代の私たちの経済・社会を発展させることを言います。その実現には、市民一人ひとりが、未来への責任を果たすために主体的に、行動を起こすことが必要です。「エコスタイルタウン2006」というイベントで行われた調査結果がその難しさの一端を示しています。調査では、北九州市が「世界の環境首都」を目指していることを多くの人が知っていると回答しましたが、「環境・福祉等の市民活動」が強みであると回答した市民は、たった1%程度しかいませんでした。北九州市は昨年、国から環境モデル都市に選ばれたとはいえ、自発的な市民活動までは昇華していないという問題をあらわしています。私はこうした問題の解決策として、このまちに暮らす全ての人たちが、いかなる歴史を経てこのまちがつくられたのか、先人たちの歩みを真摯に学び、将来の子孫たちに、負の財産を残さないよう、まずは一人ひとりの北九州JCメンバーが自覚し、カタリストとして行動することが重要だと考えます。さらには未来に向けた行動のベクトルを共有するため、全ての人たちがお互い強い絆で結ばれた状態を実現しなければならないと考えます。こうした運動を加速化させるために北九州JCは、2007年度から社団法人日本青年会議所全国会員大会北九州大会の実現に向けて運動を展開してきました。日本JC最大規模の事業である大会の誘致、準備、開催を通じて、JAYCEEと市民が連帯し、志を共通にする土壌を生んでこそ、持続可能な社会に向けた市民意識変革が実現し、市民一人ひとりが有機的なうねりとなります。そして大会を通して芽生えた、過去から培われてきた環境首都としての北九州の市民力が発揮され、JC運動と共に全国に伝播したとき、未来の子どもたちに持続可能な社会をつなぐことができると信じます。3年目を迎える全国会員大会誘致運動を、今まで以上にLOMメンバー全員が主体的意識を持ち、社会からの期待感に応えるべくLOM全体として戦略的に取り組み、2012年度全国会員大会主管LOMに選ばれるよう、心をひとつに運動を展開してまいります。


未来の子どもたちの心を育む社会を創造しよう

 日本人は古来より、四季折々の豊かな自然の恩恵に感謝し、先人を敬い、他者を思いやる心を大事にしてきました。しかし、私たちを取り巻く現代社会は、物質的には豊かになったものの、心の豊かさは乏しくなるばかりで、利己主義的な価値観が蔓延し、道徳心なき経営者や公共心なき公務員の不祥事、青少年による信じ難い凶悪犯罪などが頻発する荒廃した社会に繋がっているのです。私はこれらを目の当たりにして、憤りを感じずにいられません。しかしながらこれらの問題を生み出している責任は私たち大人にあり、未来を担う子どもたちが、心豊かな人格を育む上において、私たちの行動すべてが、大きな影響を与えていることを決して忘れてはなりません。子は親の鏡というように私たちの心も映し出しています。親を大人として言い換えてみると分かるように、大人としての存在から感じさせる、説得力のある背中を子どもたちに見せ続けることこそが、私たちに最大限に求められている責務なのです。そして、その背中を通して、先人への感謝、命の尊さ、自然環境を守ることの大切さなど、現代の日本人として失いつつあるOMOIYARIの心という道徳観を伝えることがまずは大切な第一歩となります。子どもを持つ親と同世代のJAYCEEとして己を律し、子どもたちから憧れるような、かっこいい大人の背中を見せることができるよう自分たちの生き様を示していきましょう。そこから私たちの社会全体にOMOIYARIの心が満ち溢れたとき、心豊かな子どもを育む社会へと繋がるのです。


与えられた機会をチャンスに変えよう

 「JCとは究極の割り勘主義の団体だよ」。これは私が入会したばかりの時に先輩から頂いた、今でも強烈に頭に残っている言葉です。まさしくJCとは、職業も会社規模も年齢も考え方も違う仲間たちと未来を語り合い、高い目標に対して積極果敢にチャレンジをすることで、自らを成長させてくれる機会が平等に与えられる組織である事を的確に表現しています。JCの創設者であるヘンリーギッセンバイヤーは「前向きな変化を創り出すのに必要な、指導力の開発、社会的責任、起業家精神、及び友情を深めるために青年に機会を与えることによって地球社会の発展に寄与すること」という使命を掲げJCを創設しました。ここで重要なのは活動へ参画することによって与えられた機会を、チャンスとして大きく変えることです。チャンスは目の前を通り過ぎてしまうと後からは決して掴まえることは出来ません。与えられた機会をJAYCEEとして大きく成長させる絶好のチャンスへと変化を起こしていきましょう。特に月に一度、会員が集う例会は、私たちの運動の方向性を確認するとともに、JAYCEEとしての志と誇りを再認識できる絶好の機会です。また出向や各種大会への参加は、日本JC、九州地区協議会、福岡ブロック協議会の同志との出会い・関わりを通じて、JC運動の本質や可能性を学べる機会であり、LOMとして、運動を大きく展開していくのに必要な連携強化を図れる貴重な機会でもあります。是非とも多くの会員が、すべての機会に気づき学んだものをこの地域に持ち帰り、それを具体的なまちづくりの活動へと繋げていきましょう。それはLOMに留まらず、必ず市民の能動的な行動を喚起し、私たちの地域が大きく変わっていくチャンスとなるのです。


新たな価値の創造に向けて組織を進化させよう

 北九州JCは小倉青年会議所として1953年の創設以来、常に変革の能動者として、地域と共に運動を積み重ねてきました。しかし、現在、新しい社会サービスの担い手として、市内にも多くのまちづくり団体や200以上のNPO法人が誕生し、2008年には新公益法人制度が全面施行されるなど、JCの存在意義が問われる時代となりました。創始の精神から受け継がれてきた運動を継承していきながら、公益社団法人格取得に向けて、地域社会から信頼され、持続的に新たな価値を創造することが出来る組織へと進化させていきましょう。また私たちの展開する運動を、あらゆる方向に対して発信することは、存在意義をより明確にするだけでなく、志に共鳴する仲間を増やし、今後も運動を展開し続けていくための重要な要素だと考えます。様々な情報発信ツールの特性を十分に検証しつつ、地域メディアとの連携をしっかりと図りながら効果的な運動の情報発信を行います。そして会員一人ひとりがJCの誇りを持って、JC運動の素晴らしさを語り、志を同じくする仲間の拡大に努めて行きましょう。また私たちは時代の移り変わる中で、全会員が同じベクトルに向かって運動を展開し、市民・行政・NPOなど外部との強固な信頼のネットワークを築いていく必要があります。このネットワークこそが、社会変革を誘導できる力強いカタリストとして運動を展開できる原動力となるのです。今こそJAYCEEの力を結集し、このネットワークを存分に活かした運動へと展開していきましょう。その結果、北九州JCは社会的価値を高め、真に説得力を持つ、力強い組織として進化していくのです。


国際的視野を持った人材の育成を図っていこう

 北九州JCは全国709LOM、約4万名の同じ志を持つ仲間を有し、さらに国際青年会議所においては128ヶ所の国及び地域に114ものNOMと約18万人にもなる大きなネットワークがあります。私たちはこのネットワークを活かし、JAYCEEとして、個と個との交流だけでなく、LOMと地域との交流を通して、隣人であるアジア諸国を始め、民間外交を展開できる無限の可能性を秘めていることを忘れてはなりません。また、台北JCや仁川富平JCなどの海外姉妹JCの同志との交流は、JCの三信条のひとつである「友情」の大切さを認識できる大きな機会でもあります。私は2008年に、仁川富平JCとの姉妹締結20周年記念事業に関わり、また我が子が参加した台北JCとのIFP児童交換事業を、父親という立場で同行したことで、長い期間をかけてお互いが信頼し積み重ねてきた交流の歴史は、どんなに時代が様変わりしても、色あせることなく続いてきた「友情」の証なのだと強く確信することが出来ました。本年はIFP児童交換事業が北九州において40回目を迎えます。この記念すべき機会に、事業の意義を私たち自身が再確認し、その創始の精神を忘れずに、今までこの事業に関わってきた全ての皆様と共に祝福し、相互交流の新しい第一歩のきっかけにしていきたいと思います。そして海外姉妹JCとのポジティブな関係構築のために目的意識をもって交流をし、お互いの歴史、伝統、文化を尊敬し、讃えあうことで共生の考え方を学び、国際的視野を持った人材の育成を図ってまいりましょう。それこそが私たちが目指す恒久的な世界平和を導く近道なのです。


最後に

 「変化をマネージメントする最善の方法は、自らの変化を作り出すことである」という経営学者P・Fドラッガーの言葉があります。何人たりとも自分たちを取り巻く状況の変化を簡単に止めることはできません。しかし唯一できること、それは自分自身を変革するために自らが動き、カタリストとして周囲の人たちの行動のきっかけとなることです。自分が変わればJCという組織が変わり、組織が変われば地域が変わり、地域が変われば社会が変わります。今こそ信じあうJCの仲間とともに理想の未来を語りあい、その未来に向かって果敢に挑むカタリストとして、すべての市民が自信と誇りで満ち溢れた社会となるよう、私たちのまちづくりの運動を推し進めようではありませんか。その運動の先には、澄み渡った青空のような明るい豊かな社会が確かに存在するのです。

 先人から脈々と受け継がれてきた、このまちの明るい未来を創造するために…
 すべての市民が自信と誇りで満ち溢れた北九州であるために…
 わがまち北九州への誇りを胸に、社会変革に挑むカタリストたれ!!


基本方針
【1】 地域アイデンティティの確立を目指した運動を推進しよう
【2】 持続可能な社会の実現に向けた運動を展開しよう
【3】 未来の子どもたちの豊かな心を育む社会を創造しよう
【4】 与えられた機会をチャンスに変えよう
【5】 新たな価値の創造に向けて組織を進化させよう
【6】 国際的視野を持った人材の育成を図っていこう
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