2026年度 理事長所信
はじめに
ある休みの日。小学生だった私は、わくわくしていた。父が働いていたデパートに、遊びに行くのだ。休みの日のデパートは、たくさんのお客さんで溢れていて、店内は活気に満ちていた。デパートの向かいにある商店街もまた、わくわくする場所だった。たくさんの専門店が軒を連ね、アーケードは、小さな子どもから中高生、大人、ご老人、様々な人がお店を出たり入ったり、あるいはウィンドウショッピングをしながら、休日を楽しんでいる。
今思えば、このまちの光景は、北九州というまちの活気そのものだった。そして、私は子ども心にも、北九州というまちが大好きで、誇りであった。しかし、工業都市として栄えた北九州は、産業構造の変化によって徐々に以前の活気が失われ、今や、人口減少や高齢化といった、我が国の各都市、ひいては世界が抱える社会課題にいち早く直面する「課題先進都市」と言われるまでになった。それでも私は、純粋に「北九州を元気にしたい」と思っていた。だから、多くの企業からの内定を全て辞退して、地元企業に就職した。そして、より主体的に、まちを元気にする事業をしたいという思いで独立・起業した。
そんな中、私はJCに出会った。JCには、私と同じように、今も昔も北九州を愛し、北九州のために汗をかく人たちがいた。そして、その思いは70年余に渡り、先輩方から連綿として受け継がれている。
私は、くやしい。北九州が「課題先進都市」などという言葉で表されていることがくやしくてしょうがない。
しかし、北九州にはJCがある。北九州を明るく豊かに、誇りを取り戻そうとする青年たちがJCにはいる。JCの仲間と共に、北九州を「課題先進都市」から「課題『克服』先進都市」へ。そして、北九州の誇りを取り戻すため、私は全身全霊を込めて、駆け抜けることを誓う。
2026年度の事業方針
友情の絆を力にまちの発展へ
北九州JCは、台北JC、ウェラワッタJC、仁川富平JC及びインパクトJCと姉妹締結し、積極的な国際交流事業を展開してきた。
近年では、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって直接的な交流ができない状況に直面したが、デジタルツールの活用等によって、姉妹JCとの友情を育んできた。
JCの行う国際交流事業は、青年会議所の最大の目的である「恒久的世界平和」の実現に直接的に寄与する取組みであり、JC運動の根幹の一つであることは論を待たない。
これまで、JCが展開する国際事業は、人と人、LOMとLOMとの交流がメインであった。私はこれを一歩進めて、姉妹JCとの交流を、お互いのまちの発展や市民の未来に繋がるものに進化させたいと考えている。
すなわち、海外のLOMには、国内では知り得ないまちづくりの取り組みがあるであろうし、北九州と同じ社会課題を有しているまちもある。逆に、北九州から海外に提供できる先進的なまちづくりの取り組みや情報もある。
姉妹JCとの交流を通じて、双方のまちの課題を共有し、お互いのまちのために何ができるかを考えることは、JCにしかできないまちづくりのアプローチである。また、この交流が双方のまちの発展に寄与できれば、姉妹JCとの友情関係が、まちとまちとの友情関係、ひいては国と国との友情関係に発展することを確信している。
姉妹JCとの交流を通じて、広い視野でまちづくりを考え、JCならではのアイディア、情報を北九州に還元していきたい。
課題先進都市から課題『克服』先進都市へ
前述のとおり、北九州は、「課題先進都市」と表現されることがある。
これは、人口減少や高齢化といった社会課題に、我が国の各都市、ひいては世界中の国や地域に先んじて、北九州がいち早く直面することを意味する。北九州はそのような都市として、国内外から注目を集めている。
もっとも、北九州は最近、「課題先進都市」になったわけではない。現在、「課題先進都市」と言う表現は、まちの活力が減少する文脈で用いられることが多いが、北九州は、まちが「発展」する中でも、「公害」という深刻な環境社会課題に、他の地域に先んじて直面してきたという歴史がある。
その課題に対し、婦人会による「青空がほしい」運動に端を発し、産学官民が連携して公害を克服してきた。この北九州の公害克服の取組みは、他の自治体のロールモデルとなり、近年では、北九州が海外において展開する国際環境ビジネスの礎ともなっている。
このように、北九州には社会課題「克服」の歴史と実績があり、他にはない魅力的な特性も多くある。その歴史と特性から可能性を見出し、JCが市民のリーダーとして、今、北九州が抱えている社会課題に切り込み、北九州の魅力を発信し、課題解決の成功事例を創出したい。
成功事例は、決して大規模なものでなく、局地的なものでもよいと考えている。小さな成功事例が、ロールモデルとなって他の地域に波及して、やがてはまち全体の課題解決に寄与する。そのような課題「解決」の起点となるような、確かな一歩となる何かを、皆で考え、創造していきたい。
志を育み、まちの未来を創る
北九州が抱える様々な課題を解決するには、北九州で生まれ育った子どもたちが、大人になっても北九州に住み暮らし、北九州の発展のために汗を流す、ということが非常に重要であり、そのような人々の存在そのものが、「人口減少」や「高齢化」という課題を克服する一助となる。
しかし現状は、高校、大学などを含む北九州市の全卒業者の約60%が市外へ流出し、都心での就職を選んでいる。
その原因として、地元で働くことを希望している若者の希望職種と、地元企業の求める人材のミスマッチなど、一朝一夕には克服が難しい問題もある。
しかし、私たちは、子どもたちの「心」に呼びかけ、「心」を育てることによって、この課題を解決していきたい。
すなわち、北九州の子どもたちに対し、「自分たちが将来の北九州を担う存在なのだ」という使命感と誇りを胸に、大きな志を持って自身の将来を考えるきっかけとなるような「原体験」を、私たちの事業を通じて提供したい。
「自分たちが将来の北九州を担う存在なのだ」という使命感と誇りを持った子どもたちが増えれば、自ずと、学校を卒業した後も、北九州で就職する、あるいは北九州で起業する若者が増え、そのような若者の存在が、北九州が抱える様々な課題を解決する原動力となり、世界に誇れる北九州を築いていくと私は確信している。
人こそ力、仲間とともに未来へ
青年会議所は、まちを思う「人」の集まりであり、「人」が青年会議所の原動力であって、唯一の財産といってよい。よって、LOMの「人」を増やす会員拡大運動は、今も昔もLOMの総力をあげて取り組むべき事業である。
しかし、残念なことに、北九州JCの会員は減少傾向と言わざるを得ない。また、各年度の会員分布を鑑みると、この数年でかなり多くの会員が卒業を迎えることとなり、今後、会員拡大運動が停滞すると、北九州のJCの会員は激減するのは明らかである。
従って、会員拡大運動は、速やかに成果を出さなければならないLOMの喫緊の課題であることを、LOMの全メンバーの共通認識としたい。
現在は、JC以外にも様々なまちづくり団体が存在し、それぞれの団体が目的を持ってまちづくりに取り組んでいる。このような各団体は、JCの運動と目的は異なっているとしても、まちを思い、まちのために汗をかいている人の集まりであることはJCと共通しているはずである。
私は、今年の会員拡大運動の取り組みとして、これまでの伝統的な会員拡大手法に加え、このような他のまちづくり団体とも積極的に交流し、その中でJC入会に適格性を有する青年経済人を発掘し、入会につなげたいと考えている。
まちを思う心に団体の垣根は障害とならない。北九州を思い、活動する心のある青年経済人にJCの魅力を知ってもらい、入会に繋げ、LOMをいっそう活性していこう。
学び、体験し、次代を担うJAYCEEへ
北九州JCの門を叩いて間もないアカデミーメンバーへの教育は、未来のLOMの力に直結する重要な運動である。
アカデミーメンバーには、北九州JCの歴史と創始の精神を学んでいただくとともに、JC運動の中での「成功体験」を通じて、JAYCEEとして成長し、一人ひとりが今後の北九州JCを担う人材として活躍していただきたいと考えている。
そして、北九州JCの歴史と創始の精神を学び、かつ事業を通じての成功体験を享受できる事業が、「わっしょい百万夏まつり」である。
旧五市意識を払拭することを目的に北九州JCが開催した「まつり北九州」は、「わっしょい百万夏まつり」へ進化を遂げ、北九州最大規模のまつりとして現在に至っている。
アカデミーメンバーには、今年もLOMの中心として「わっしょい百万夏まつり」に参画していただき、JCがつくるまつりの壮大なスケールを体感していただくと共に、このような素晴らしいまつりを創造し、発展させてきた北九州JCの歴史を学ぶ機会としたい。
加えて、今年のアカデミーメンバーには、他委員会の事業にも当事者意識を持って積極的に参画していただきたいと考えている。
アカデミーメンバーが、入会当初からJCの様々な運動に参画することで、アカデミーを卒業後、2年目から「即戦力」としてJC運動を展開できる人財となることができるし、早いうちから自身が注力したい運動分野を発見することができれば、JCに対する高いモチベーションを維持して活動することができる。
アカデミーメンバーには、「歴史と創始の精神」を学び、「成功体験」を得ながら、様々な運動分野に「参画」する、そのような充実したJCライフ1年目を送って欲しい。
「量から質へ」転換する戦略的広報
これまでの広報は、多くの情報を発信することを中心に行ってきた。その積み重ねによって組織の存在を広く周知し、活動の可視化に大きな役割を果たしてきた。今後はさらに、届けたい人に確実に届き、市民の意識変革へと繋がる広報を目指していきたい。
本年度おこなう広報は「戦略的広報」です。即ちやみくもにSNSに投稿するのではなく、誰に・何を・どのように伝えるのかを明確にした上で最適な媒体を選び、計画的に発信していく広報だ。多様なメディアを組み合わせ、それぞれの強みを活かしてターゲットに響く広報を実現したい。そうすることで発信した情報が単なる一過性のものではなく、共感や行動につながる広報を展開していきたい。
情報が溢れかえる今、本当に伝えるべきメッセージを的確に届けることは容易ではない。だからこそ「量」から「質」へと広報の在り方を転換しなければならない。戦略的な広報を通じて、我々の活動の意義を市民に共感いただき、まちの未来をともに創る仲間を増やしていこう。
原点に学び、未来を創る
例会とは、LOMとしての方向性を全メンバーで再確認する大切な場だ。全員が一堂に会する唯一の機会であるからこそ、その時間を無駄にすることなく、有意義に活用しなければならない。
今年度は、例会を「LOMメンバーが未来への自信へ繋げる場」として位置づけたいと考えている。私は未来を語り、仲間とともに進むべき方向を共有していく。担当委員会は設えを通じて企画力や運営力を学び、参加するメンバーやゲストは、各月の担当委員会から提供されるコンテンツを通じて資質を磨き、成長を遂げていく。その学びを自らの社業やJCの活動に活かすことで、一人ひとりが自身の可能性をさらに広げていけると確信している。
例会は単なる行事ではなく、互いに学び合い、人材を育み、そしてJCの魅力を発信する原点の場だ。本年度はその意義を見つめ直し、LOMメンバー一人ひとりが成長を実感できる例会を創り上げていく。
支える力から進化する総務へ
総務はこれまで、組織の基盤を支える「縁の下の力持ち」として、会の円滑な運営に欠かせない役割を担ってきた。会議の準備、庶務的な対応など、目立たないながらも組織を支えるその働きがあったからこそ、安定した活動を続けてこれた。
本年度、私が目指すのは、伝統ある総務の役割を大切にしつつも、時代に即した「進化する総務」です。従来の庶務業務に加え、デジタルツールを積極的に取り入れることで、効率を高めたいと考えている。
そして、こうした取り組みによって生まれた「余白の時間」を、メンバー一人ひとりが人と向き合う時間、議論する時間、学び合う時間とすることで「進化する総務」がLOMメンバーの資質向上、ひいてはLOMそのものの成長に繋がることを確信している。
時代に合わせた新たな形を創造
青年会議所は「明るい豊かな社会の実現」を理念に掲げ、先人たちは時代ごとの社会課題に挑戦してきた。年齢制限や単年度制という仕組みがあるからこそ、常に新しい時代の課題に柔軟に挑めるのがJCの強みである。
この特性を活かしつつ、時代に合わせて組織や運動の「形」を進化させる役割を、理事長直轄の事務局が担う。関係団体との調整や連携について責任を持って推進し、スムーズな運営基盤を構築する。
まずもって取り組むべきは、「到津の森ちからの会」との協働である。かつて、北九州JCは、閉園の危機に直面した「いとうづゆうえん」を守るため、市民とともに存続運動を展開した結果、「いとうづゆうえん」は、「到津の森公園」に生まれ変わり、現在は多くの市民に親しまれている。本年度は、今後の「到津の森公園」の持続的な運営・発展のため、北九州JCが中心となり、「到津の森ちからの会」とともに関係団体とも協働し、有事にも対応できる連携体制を構築していきたい。
最後に
まちの課題を解決することは、決して容易なことではない。なぜなら、まちの課題は、そのまちの歴史、地域性、市民性などが複雑に絡み合い、長い年月を経て醸成された、そのまちの「病相」だからだ。
しかし、JCの先人たちは、いつの時代もその難題に正々堂々と勝負を挑んできた。そして、その課題を克服してきたからこそ、JCが社会的存在として認識され、今も存在し続けているのだと考える。
とすれば、まずは私たちが、JAYCEEとしての誇りと覚悟を持ってまちの課題に立ち向かわなければならない。
Walk together with our pride ~志を貫徹し、まちの未来を切り拓け~
そして、私たちの運動のその先には、私が小学生のころに感じた、活気と誇りに満ちた北九州の光景が広がっていると確信する。
一般社団法人 北九州青年会議所
第74代理事長 刀根 和也
2026年度運動方針
- 友情を礎に、高め合う国際交流をしよう
- 子どもたちの「挑戦心」と「利他の心」を醸成し、未来を創造しよう
- 志と誇りを育み、未来を担う人材を創ろう
- 仲間を拡げ、学びと成長の原点を磨く
- 戦略的発信で共感を広げ、誇りある北九州へ
会員用



