理事長所信
はじめに
20代の私は、自分のことで精いっぱいでした。
新卒で入社した会社から転職したばかりで、経済的な基盤もなく、営業職として日々、自分のノルマをこなすことしか考えていませんでした。
そんな中、私はJCに出会いました。JCに入会したのも、「自分のため」でした。地元が北九州でない私は、「人脈ができればいい。仕事につながればいい。」そんな思いで、JCの門を叩いたのです。
しかし、入会してすぐ、私は自身の気持ちが変化していくのを明確に感じるようになりました。JCには、「まち」や「ひと」を想い、情熱的に運動に取り組む先輩方がいました。その圧倒的な行動力に感化され、私はいつしか、「自分のため」ではなく、「まちのため」「ひとのため」にJC活動をおこなうようになっていました。
もっとも、私のJC活動は順風満帆ではありませんでした。事業計画が通らず虚無感に苛まれ、すべてから逃げ出したくなったこともありました。しかし、「まち」や「ひと」を想い、がむしゃらに突き進んだ結果、最後までやり遂げることができました。
今、北九州市は、少子高齢化、人口減少の真っただ中にいる都市です。まちの様々な要素が縮小していく中、企業は、限られた人材や顧客を奪い合い、厳しく辛い競争を繰り広げています。そのような状況の中で、このまちに住み暮らす人々は、かつての私のように、「自分のことで精いっぱい」である人が多いように感じます。
しかし、このような時代であるからこそ、人が人を思いやり、企業と企業が助け合って、まちを支えていかなければなりません。このような厳しい時代のまちづくりにおいて、私たち青年に、そしてJCに求められているのは、若者ならではの発想力ももちろんですが、ひたすらに「まち」や「ひと」を想い、がむしゃらに行動する、今自分の持てる力で最善を尽くすという「気概」であると思います。
北九州青年会議所は、2023年で70周年を迎えました。
北九州青年会議所の歴史は、先輩方が、「まちのため」「ひとのため」にがむしゃらに汗を流した歴史であり、そこには常に「利他の心」がありました。私は、先輩方が70有余年の歳月をかけて培われた利他の心を受け継ぎ、このまちに利他の心を広げるべく、気概と覚悟をもってJC運動に邁進する所存です。
「相互共生」の心で地域連携都市の未来を創造しよう!(地域連携)
北九州市と下関市は、まちとして共通の課題を抱えています。すなわち、両市とも、産業構造の変化によって、それぞれの特徴であった産業は衰退し、人口減少、特に若者世代の人口流出は顕著な課題となっています。
関門海峡という共通の財産を持つ北九州市と下関市は、古くから歴史的に密接な関係を持ちながら、人やモノが行き交う要衝として一体的な都市圏・経済圏を形成してきました。
「下関北九州道路」構想が期待される中、2023年には「関門新連携」をスローガンに、両市長会談(関門トップ会談)が12年ぶりにおこなわれ、行政レベルでも主に観光分野や市民交流の面で連携の強化が図られています。
このような北九州市・下関市の連携強化の機運を、民間からも盛り上げる必要があります。私は、都市間の連携においても、利他の心をもつことが重要であると考えています。例えば、一方の都市の弱みを他方の都市の強みで補う、若しくは、両都市の強みを有機的に掛け合わせ、シナジー効果によるあらたな地域資源を創出するなどといった、助け合いの視点で新たな都市連携を推進することが重要です。
北九州JCは、長年、下関JCとの友好関係を育んできました。私たちは、今まで築き上げてきた青年会議所のネットワークも活用し、「青年経済人の視点」「若者の視点」で、JCならではの関門都市連携を推進します。
私たちは次世代に希望を託すためにも、地域連携都市の未来を創造し、今こそ地域のリーダーとして立ち上がります。未来への挑戦に共に進み、多くの市民がここで暮らすことに誇りと幸せを感じられる地域づくりに取り組んでいきます。
子どもたちの「挑戦心」と「利他の心」を醸成しよう!(青少年育成)
北九州JCは70周年記念事業として実施した「北九州キッズチャレンジパーク」を通じ、地域の小学生児童を対象にした青少年育成事業を展開してまいりました。第2回目となった昨年も、第1回目に引き続き4,500名を超える子どもたちや保護者にご来場いただき、大変な盛況を収めました。この事業のテーマは「自己肯定感を高める」ことであり、アンケート結果からも参加者がその目的を達成できたことが確認されています。
2025年も、「北九州キッズチャレンジパーク」を継続し、北九州JCの青少年育成の基幹事業として実施します。そして、2025年の「北九州キッズチャレンジパーク」は、参加児童に自己肯定感を高めてもらうと共に、「利他の心」を育めるようなプログラムも盛り込みたいと思います。
具体的には、人を助けることを主とする職業体験や、みんなで力を合わせて取り組むアトラクションなどを通じて、「利他の心の醸成」と「成功体験の積み重ね」を同時に達成できる新しい仕掛けに取り組みます。
「北九州キッズチャレンジパーク」を通じて、「挑戦心」と「利他の心」を持った多くの子どもたちが、未来の北九州を切り拓いていってくれることを私は確信しています。
JCだからこそできる国際交流を体感しよう!(国際・台北)
北九州JCは、これまで多くの国々との絆を築いてきました。台湾の台北JC、スリランカのウェラワッタJC、韓国の仁川富平JC、そしてモンゴルのインパクトJCという4つの姉妹JCを有しており、全国的にも極めて豊かで歴史がある国際交流を展開しています。
台北JCとは、毎年IFP(International Family Project)児童交換事業を行い、2024年には、節目となる55回目を実施することができました。この長い歴史をもつプロジェクトを通じて、子どもたちも、大人たちも友情を深めていきました。
また、仁川富平JCとは1988年に姉妹締結を行い、長年にわたる公式訪問や協働事業を通じて、国家の枠を超えた友情が深まっています。
さらに、インパクトJCとは、2016年に友好締結を結び、2018年に姉妹JCとなりました。私自身も、友好締結時の担当委員会メンバーとして活動しており、それ以来、相互の公式訪問や新たな交流方法を協議しながら、より発展的な交流を目指してきました。年々、友情関係が深まりつつあることを強く実感しています。
国際交流において最も重要なのは、まさに「利他の心」です。他国の文化や社会背景を理解した上で、目の前の相手に対し、「何をしたら喜んでくれるだろう、仲が深まるだろう」と一生懸命に考え、行動することで、真の交流が生まれます。そのような「個と個の交流」がいくつも積み重なった結果、最終的には、私たちJCが目指す「恒久的な世界平和」が実現されることを私は確信しています。
2025年の国際事業を通じて、北九州JCが長年培ってきた姉妹JCとの友情をさらに強固なものとします。姉妹JCのメンバー同士が、単なる「友人関係」を超越した、混沌とした国際社会の中で、互いに支え合い助け合える、かけがえのない関係であり続けることを目指します。
仲間を増やし共に成長をしよう!(JAYCEE育成・拡大)
近年、全国的に青年会議所の会員減少の傾向が続く中、北九州JCも例外ではありません。この状況を私たちは重要な課題として真剣に捉えなければなりません。
もっとも、私たちは、会員減少という「事象」のみに目を向け、「新規会員の獲得」のみに拘泥するべきではありません。
会員減少の根本的な原因は、少なくとも外部の目からは、青年会議所の組織・活動・メンバーが魅力的に映っていないという点があります。
従って、私たちは、まちの青年経済人に北九州JCを知ってもらう、というだけではなく、既存のJCメンバーがよりいっそう研鑽し切磋琢磨する中で、会員の資質、魅力を高め、さらには組織としての魅力と結束力を高め、それらを外部に発信していくという、多面的な取り組みを実践していかなければなりません。
このような視点から、2025年は、メンバー育成に重点を置いたプログラムを通じて、対内での学びや交流の機会を増やし、メンバー同士の絆を深める場を提供します。
メンバーの資質向上が、LOMの活力のボトムアップに繋がり、それがひいては地域社会に対するより大きな影響力へとつながる結果、会員拡大にも根本的かつポジティブな変化をもたらすことを私は確信しています。
「利他の心」を持った次世代のリーダーを育てよう!(アカデミー)
青年会議所は次世代リーダーの育成を使命とし、新入会員であるアカデミーメンバーへの教育を常に重視しています。これは私たちの活動の基盤であり、これまでも、そして今後も最も重要な役割のひとつです。
当時の私がそうであったように、アカデミーメンバーの中には、「自分の人脈作りため」「自分の仕事のため」という目的で入会してきたメンバーもいるでしょう。
そのようなメンバーにこそ、私は、北九州JCが培ってきた「利他の心」を体現した事業である、「わっしょい百万夏まつり」や「到津の森公園支援事業」に参画してもらい、地域とのつながりだけでなく、「何のために」「誰のために」活動するのかというJC運動の意義を実践的に体感していただきたいと考えています。
他方で、月に一度の室会議では、JCとしての会議体を学ぶと同時に、新人研修プログラムを実施して、知識面からJAYCEEを育成します。
このように、事業体験を通じたまちづくりの実践と、室会議を通じた知識習得を連携させ、さらに他委員会の事業や各種大会等の参画で、LOM内外におけるJCの規模感と交流の機会を感じてもらいます。これにより、JCに入会したからこそ得られる貴重な一年間を体験していただきます。そして、その経験を通じて「自分のため」ではなく、「まちのため」、「ひとのため」という利他の心を育み、地域の未来を担うリーダーの育成を目指していきます。
「学び」と「交流」の機会をフル活用しよう!(例会)
メンバーが一堂に会する例会は、組織の方針を確認するとともに、「学び」と「交流」の機会を提供する重要な場です。
私が考える例会の「学び」とは、ただ単に講師の話を聞く、例会中のプログラムを受けるという受動的なものに留まりません。すなわち、メンバーが例会を「設える」ことを通じて、学びの提供者になることも重要であると考えています。従って、2025年度の例会は、各月の例会を委員会担当制にすることによって、全メンバーが例会中の学びの「受容者」であるだけではなく、「提供者」にもなれるようにします。メンバー一人ひとりが、学びの「提供者」になることを通じて、どのようにしたら、メンバーに意義あるものを持ち帰ってもらえるだろう、という利他の心が育まれるのです。
そして、「交流」については、過去の形式にとらわれることなく、各月の担当委員会が、どうしたらメンバー同士の交流が深まり、LOMの団結力が強まるのか、ということを一から考え、創造性に富んだ懇親の場を作り上げていきます。
これらの実践によって、メンバー一人ひとりが自身の成長を実感すると共に、他のメンバーとの懇親の深まりとLOMの団結力の高まりを実感できるような例会を実現します。
想いをもちながらスマートな会議体を目指そう!(総務)
青年会議所の意思決定の根幹は、議案とそれを基にした会議運営にあります。特に理事会では、理事構成メンバーが各々の責任を自覚し、代表者としての緊張感を持ちながら、一票の決定権を有していることを常に意識する必要があります。
会議体は時代の流れに応じて変革を重ねています。慣習に縛られることなく、時代に適した手法やシステムを活用し、最大限のパフォーマンスを発揮できる会議体を目指します。
また、2023年には、北九州JCシニアクラブのご協力のもと、LOMの会員システムが新たに構築されました。同会員システムにはまだまだ多くの可能性が秘められています。メンバー一人ひとりが当たり前のように会員システムを活用し、スムーズな運営管理を実現できる仕組みを模索していく必要があります。
共感と信頼を築く広報をしよう!(広報)
日々進化する情報化社会の中で、活動や理念を効果的に発信する「広報」の重要性は一層高まっています。
地域社会に私たちの取り組みを広く届け、市民の理解と共感を得るために、広報戦略を常に最新かつ最適化し、流行にも敏感に対応していく必要があります。これまで活用してきたデジタルメディアを基盤に、SNSやウェブサイトでの情報発信を強化し、地域社会にリアルタイムで価値ある情報を提供します。
また、動画コンテンツやライブ配信など視覚的に訴求力の高い手法を取り入れ、幅広い層にリーチし、共感を生む広報活動を展開します。さらに、地域メディアとの連携を強化し、ローカルニュースや新聞などを通じて、私たちの活動を広く周知させるための取り組みを進めてまいります。これにより、青年会議所の活動がより広く認識されるとともに、地域社会全体への影響力を高めることができます。
メンバー一人ひとりが「広報の担い手」であることを自覚し、積極的に情報を発信する文化を醸成していくことが必要です。メンバー全員が広報の一端を担い、北九州JCの活動を共に広げていくことこそが、地域社会との信頼関係を築き、未来の発展につながるものと確信しています。
変わらない価値観と新たな挑戦を調和させた組織運営をしよう!(組織)
近年では、デジタル技術の進展により、私たちの生活や仕事のスタイルは大きく変わり、情報の流通やコミュニケーションの方法が革新されました。一方で、多様化が進む中で、異なる文化や価値観が交錯し、新たな社会課題や摩擦が生じています。これは我々が所属する青年会議所内でも同じことが言えていると私は感じます。「JCしかなかった時代」から「JCもある時代」へと変わり、毎年LOM内の状況も複雑な課題に直面しています。このような複雑な時代において、変わらない価値観と新たな挑戦を調和させることが、今のJCに必要なことであり、私はそのような組織をつくっていきたいです。
そのためには、まずメンバー一人ひとりがJCの理念や使命を再確認し、共通の価値観を共有することが必要です。そして、新しい発想を積極的に取り入れ、「変化を恐れない姿勢」が大切です。同時に、多様な意見を尊重し、メンバー全員が「利他の心」をもって主体的に挑戦できる環境をつくり出すことが、組織の未来を切り拓く鍵となると確信しています。
最後に
「JCしかなかった時代」から「JCもある時代」になった今、私たちJCに求められていることはなんでしょうか。
私は、最新の技術を駆使した何かではなく、たくさんの資本を投じて作り上げる何かでもないと考えています。
私たちJCが求められているもの、それは、まちを想い、ひとを想い、未来を想い行動するひたむきさ、がむしゃらさであることを私は確信しています。
かっこ悪くてもいい、失敗したっていい。それでも、私たち北九州JCは「利他の心」をもって、がむしゃらに歩を進め続けます。
DO YOUR BEST FOR OTHERS
皆で一緒に、利他の心あふれる未来をつくってまいりましょう。
一般社団法人 北九州青年会議所
第73代理事長 正冨 晃規
2025年度運動方針
- 明るく豊かな地域連携都市の未来を創造しよう
- 子どもたちの「挑戦心」と「利他の心」を醸成し、未来を創造しよう
- 互いに支え助け合える、かけがえのない関係となる国際交流をしよう
- 自らを律して、リーダーとして成長しよう
- 変わらない価値観と新たな挑戦を調和させた組織運営をしよう