市民全体のまちづくりを模索
事業を企画する際に、常に課題となるのが、「北九州JCは提案する団体なのか、実践行動する団体なのか」と「市民主体のまちづくりとは、どのようなもので、どうすれば実現できるのか」ということだった。1996年(平成8年)、第44代諏訪下理事長は、今後のまちづくり、北九州市の活性化はどうあるべきかについて思案していたところ、高知ではJCと行政とがタイアップして、住んでいる人の視点でまちづくりを模索する「第1回わくわくワークショップ」を開催し、貴重な体験をしたという情報を入手した。そこで北九州JCは、北九州市のわくわくワークショップ開催誘致に協力し、ワークショップとは何か、まちづくりにどのような作用をもたらすのかを学び、取り入れられるものを吸収しようと考えた。
現場を体験し、生活者の視点で考える
北九州JCは、67団体が加盟しているまちづくりネットワーク北九州と行政の3団体で、わくわくワークショップ全国交流会実行委員会を立ち上げ、主管としてその3団体が任務に当たった。1996年5月、北九州市立かぐめよし少年自然の家を主会場に、「わくわくワークショップ全国交流会in北九州」を開催。
参加したのは、一般市民をはじめに全国の街づくり団体や行政関係者、都市計画のコンサルタントなど約700人。また、約1000人の地元ボランティアに協力していただいた。多彩さをモットーに北九州市全体を利用した“同時多発チャンネル”では、門司区や小倉北区の商店街の活性化、子供の遊び場づくりなどについて、班別に現場に赴いて、時間をかけて聞き取りや観察を行い理想像を提言した。藤原恵洋実行委員長は「これまでのまちづくりは、行政主導のハード中心。人の魅力を発掘して、まちづくりに活かすという発想や視点があまり無かった」と語っている。ワークショップは、現場を共同で体験し、そこに暮らし、働いている人の視点で、まちづくりを組み立てるものだと考えた。
協力し支え合って、ひとづくり、まちづくり
わくわくワークショップに深くかかわった大西孝英地域交流委員長は、「参加して学んだことは、“現場を重視すること”と“市民主体と人の会話”。また、今までどのように提言して、役目は終わったというのではなく、行政とパートナーシップを結んで、実現を図っていきたい」と語っている。北九州JCは、「わくわくワークショップ全国交流会in北九州」を通じて、全国のまちづくり団体の情報の受発信ができ、また、奉仕し支え合うという精神、そして強い使命感が生まれた。行政やまちづくり団体と、実現のために共に協力していこうという気運が芽生えた。その結果として、1997年に国際アカデミーが行われた際、ワークショップの運営を実行委員会のメンバーの協力で成功に導くことができた。また、映画「釣りバカ日誌10」の誘致活動の際には、まちづくりネットワーク北九州が協力。5万人の署名を集めていただいた。こうして北九州JCの活動範囲が広がり、存在価値をより強くアピールできるようになってきた。またその後、1997年にはまちづくりネットワーク委員会が設置され、北九州の街に出ていき、ワークショップを展開していく。2000年にはドリームワークショップと銘打って「みんなの街をみんなで考えよう」をテーマに若松で開かれた。このようにワークショップの思想と方法は次第に北九州JCにとっての財産になってきたのである。