理事長所信
第70代理事長 藤井 栄太
はじめに
私は、ここ数年、「青年会議所(以下JC)に入って人間が変わった。」と多くの人に言われるようになりました。2013年6月にJCに入会した当初の私は、自分と社業のことにしか興味のない偏屈な人間で、自らが住むまちの未来について、深く考えることもありませんでした。到津の森公園支援事業において、他のメンバーと喧嘩をして帰ってしまったことは、今でも忘れられません。
しかし、今では、私は、変わったと言われるようになりました。確かに、今、私はまちの未来に対して強い危機感を持ち、このまちのために何ができるのか、何をすべきなのか、真剣に考えています。
私を変えてくれた契機が一体何であったのか、これを明確に示すことはできません。きっと、先輩たちがひたむきにJC運動へ打ち込む姿、その運動の熱量、運動を通じたまちの人々との触れ合い、仲間達との絆、これらの要素が複雑に絡み合い、私に変化を生じさせたのではないかと思います。つまり、入会から現在までのJCの全てが、私を変えてくれたのです。
JCは、メンバーを巻き込み、市民を巻き込み、地域社会を巻き込んで、全てをより良い方向へ変化させます。私は、私自身が変わったからこそ、JCには、人を変え、まちを変え、さらには地域を通じて、国や世界をも変える力があると、誰よりも強く確信しています。
2020年より続く新型コロナウイルス感染症は、世界に甚大な影響を与えています。後の世から見れば、おそらくこの数年間は、世界を全く別の新たな世界へと変化させた数年間であったと語られると私は思っています。
コロナ禍による「3つの密」「ソーシャルディスタンス」「テレワーク」などの新しい価値観の創出は、デジタル社会への移行を我々に強制しました。国の法令においても、昨年、デジタル社会形成基本法が策定され、移行は拍車をかけ進んでいきます。
移行による変化は、多くの利点も生み出しましたが、同時に人々の間に距離を生じさせ、人と人との触れ合いの機会を減少させました。社会の個人主義化が進み、社会的孤立はますます深まっています。JCにおいても同様に、メンバー同士の交流の機会は減少し、JC運動を通じて市民と直接的に触れ合える機会も減少しています。それらの急激な変化は、我々に、JC運動そのものへの恐れや迷いを生じさせています。
仏教の教えに「依正不二(えしょうふに)」という言葉があります。自分と自分の周りを取り巻く環境は、別のものではなく一体であり、周りで起きる出来事も、周りにいる人間も、全て自分自身の心の状態を投影させたものであるという教えです。
この教えは、正に今、我々が置かれている状況を表しているのではないでしょうか。ここから先、JC運動の在り方は大きく変わります。しかし、我々がすべきことは、運動の変化に囚われるのではなく、我々の内にある自己の意識を変化させ、運動をおこなう自分自身を強化することです。今こそ我々は、内面の強化からJC運動の核となる「まちへの想い、運動への信念」を確固たるものにしなければなりません。
JC運動の在り方や世界がどれだけ変わろうと、人を想い、まちを想い、我々自身が成長すれば、地域を変えて、世界も変えられる、JCの力は今までと何も変わらないのです。
日本で最初のJCであるJCI東京は、戦後の焼け野原にて、十分なものは何もなく、全ての人びとが絶望的な状況の中、立ち上がった青年が想いを持ってJC運動を開始しました。そして、我々JCI北九州の先人たちも、市民を想い、まちを想い、懸命に動き、正にヒーローのような奉仕と利他の精神をもって、北九州の未来を変えてきたのです。我々には、その歴史と情熱が連綿と受け継がれています。
困難な状況だからこそ、我々は想いを高め、まちのヒーローとなり、JC運動へ邁進してまいりましょう。
真の青年リーダーとして成長する
目まぐるしく価値観が変化する現代社会においては、JC運動の在り方も変化し、変化に対応できないかぎり、我々の未来は明るいものとはなりません。
変化すべきなのは勿論ですが、まず重要なのは、JC運動の核を強固なものにすることです。そして、運動の核とは、「まちのために市民を変えたい、地域を変えたい、世界を変えたい」、その想いこそ運動の核です。我々が核を強固にしなければ、変化の方向性も定まらず、また、方向性が定まらない信念の弱い運動では、JCがおこなう市民意識変革運動へ、真に市民の共感を得ることはできません。
我々の想いは、個々のものではありますが、組織としての理念を表したものが「JCICreed」であります。「JCICreed」には、我々メンバーが持つべき理念が的確に表現されており、全てのメンバーで理念を共有することが、我々が真のまちづくり組織となることの始まりであります。日本のJCの総合調整機関であるJCI日本には、JCの理念を実践的に学ぶ洗練された様々なプログラムが存在し、またJCI北九州においても、セミナーやメンバー同士の様々なネットワーク構築により団体としてメンバーの資質向上をおこなってきた経験があります。コロナ禍で、個と個の意識が分断され、JC運動への意識が薄まりつつある今だからこそ、地域の青年リーダーとしての自覚と素養を高め、組織としての意識統一を促進することが必要となります。
また、我々が地域の青年リーダーであるためには、地域の青年経済人として責任を自覚し、行動することが求められます。昨今、全国において自然災害が多発しており、先を考えれば、本市が被災地になる可能性も非常に高く、いずれ来る災害の準備を怠れば、地域発展は大きく後退することになります。例年、JCI北九州では、災害時のボランティア運営を務める社会福祉協議会へ理事が出向しており、災害時には本市への積極的な協力をおこなっております。しかし、現在の状況では、災害時の態勢として万全とは言えません。本市に災害があれば、地域の青年リーダーとして、我々こそ誰よりも率先して動くべきです。本年度は、災害時の活動においても全てのメンバーで早急に対応できる態勢構築を模索し、さらには、地域防災減災のリーダーとしてのメンバー教育も含め、組織成長の機会を創出してまいります。
現代社会に即した会議体システムへの変革をめざす
JC運動の原動力は、メンバー個々の想いが集まった集合体の力であり、その力は、共に行動を起こす同士の数に比例します。そして、JCには20歳から40歳までの年齢制限があり、新陳代謝が極めて高い組織であります。
そのような組織において、会員拡大とは、運動力と継続力の双方を維持するものとして重要な運動であり、また、JCは新たなメンバーが入り、新たな知見が加わるからこそ組織が進化するのです。組織が進化し、まちへのより発展的なJC運動ができる点においても、拡大は大きな付加価値を持つ運動であり極めて重要です。
さらに、JCは単に在籍期間だけで、地域貢献が終わるわけではありません。JCにはメンバーを地域のリーダーとして成長させ、地域に送り出す仕組みが備わっています。地域で活躍する多くの品格ある青年経済人を同志とし、成長させ、また地域へ送り出して行くことは、まちの明るい未来に直結します。
昨年は、JCI北九州メンバー数154名からのスタートを切り、200名を超すという会員拡大が大成功を収めた年でありました。本年度も、我々の会員拡大がまちの未来に直結するということをメンバー一人ひとりが理解し、拡大への意識を高め、当事者意識を持って行動できることを重視し、会員拡大運動の展開に努めてまいります。
デジタル広報を駆使し、市民意識の共感を得る
我々がおこなうJC運動は、市民意識へ訴えかけ共感を得る、市民意識変革運動であります。JC運動において、運動の効果を最大化するためには広報こそが肝要です。
JCI北九州では例年、公式ホームページやSNSを用いての広報活動をおこなっております。しかし、従来までの既存の広報活動では、実際に市民へ波及したものは、決して多くありません。
社会は新型コロナウイルス感染症により変化しました。今だからこそ、直接対面にて訴えかけなくとも、共感を生み出すことができるデジタル技術を用いた新たな広報戦術を模索する必要があります。
世界の新型コロナウイルス感染症対策において、台湾は国際的に高い評価を得ています。その最前線にて活躍しているデジタル担当大臣のオードリー・タン氏が、コロナ対策の情報発信時に重要視しているものがユーモアであります。発信のコンセプトとしてユーモア・オーバー・ルーモア(ユーモアが噂を凌ぐ)の標語を作り、全ての情報発信においてユーモアを大事な要素として取り入れています。この視点は、我々の情報発信においても大切なものであり、市民意識を変革するには、ただ単に情報を発信するのではなく、ユーモアを添えておこなうべきであります。
我々はまだ若い青年経済人であります。ウィズコロナの新時代において、今まで以上に多角的な視点を持ち、ユーモア溢れる青年らしい大胆な試みを実践すべきです。市民意識に訴えかけ共感を呼ぶ広報の実現をめざし、構築してまいります。
個々の関係を深め、組織力の向上を図る
JCI北九州では、月に1度、例会を実施することが定款で定められています。コロナ禍において、例会を対面にて実施することが難しくなったことは、改めて、この機会の重要さを我々に痛感させました。我々の組織は、まちのために何かをしたいという想いをもった、青年経済人が集う有志の団体であります。それは、各々の経済的利益を求める団体ではなく、メンバー同士は志と友情のみで繋がっています。
我々の組織構成において、組織が一丸となり、まちのために革新的なJC運動を実施していくためには、定期的な組織としての意識統一の場が不可欠であります。今後、どのような状況でも立ち止ることなく、まちの未来のためJC運動を推進するために、例会本来の意義を見つめ直し、我々の団結力を高める機会として構築することが今求められています。
またJCの創設者であるヘンリーギッセンバイヤーJr.は「社会において青年が真に活躍するようになるべきだ」と考え、JCを創設しました。JCは、まちづくりをおこなうだけではなく、メンバーを地域リーダーとして成長させる育成機関であり、さらには、個々の結びつきを深めて、個を超え集団として大きな力を発揮させるため、地域で活躍する青年同士が新たなネットワークを構築する場でもあります。毎年、例会では著名人による講演や、様々なセミナーを実施し、メンバーの学びの場としてきました。本年も、その流れは継承しつつ、例会は、知識の学びだけでなくゲストやメンバー、その家族を含む我々青年世代の交流の機会としても重要な場と捉え、構築してまいります。
そして、本年度はJCI北九州が創立して69周年目であり、来年は、創立70周年という記念すべき年です。70周年に向けて、今後の我々がめざすべきビジョンを模索し、先人たちより受け継いできたJCI北九州を、次年度さらに強力なまちづくり組織とすべく、準備から機運を高めてまいります。
若者の社会参画意識を向上する
JCの目標は、明るい豊かな社会の実現であります。そして、築き上げた明るい豊かな社会を持続可能なものにするためには、次代の担い手である若者世代、特に政治への直接的な影響力を持ち、参政権をもつ18歳以上の若者の社会参画は必須であり、参画なくして真の目標達成はあり得ません。
内閣府が令和元年に発表した子供・若者白書において、日本の若者は諸外国に比べ、社会参画意識が低いとの調査結果が示されました。また、令和2年の北九州市議会選挙においては、市民全体の投票率40.29%に対して、10代は37.23%、20代は22.39%であり、どちらも市民の平均を下回る結果となっております。投票率がそのまま社会参画意識の低さを示すわけではありませんが、社会参画を表すバロメーターとして重要なものであり、現状、明るい兆しは見えません。
日本では低い若者の社会参画意識ではありますが、隣国である台湾においては極めて高く、2020年1月に行われた総統選における20代の投票率は約75%という結果となっています。台湾における若者の社会参画意識の要因は、歴史的に国民の手で政治を変えてきたという獲得経験によるものであり、自分たちで政治は変えられるという強い意識からであります。また、台湾と同様に社会参画意識が高いスウェーデンにおいては、余暇活動における政治学習やボランティア活動が意識構築の要因になっております。このような台湾やスウェーデン等における社会参画意識の高さを基礎付ける要因を多角的に捉え紐解き、我々の住む地域内で再構築をすることは可能なはずです。
また、JCI北九州では、例年、市内の若者と協力する事業を多く実施してきた経験があります。市内には、まちのために力を尽くしたいという社会参画意識の強い学生も確実に存在し、まちの若者の潜在力が高いことは、我々が誰よりも深く理解しております。若者との繋がりを持ち、彼らと共にまちづくりをしてきた経験があり、そして彼らと最も近い世代である我々青年経済人が、未来のために積極的に行動を起こすべきです。次代の担い手である若者の社会参画意識を向上するため、新たな機会および環境構築をめざし運動を展開してまいります。
ダイバーシティ&インクルージョンによるイノベーションを
総務省より発表された2020年の国勢調査において、北九州市は前回調査の2015年から人口減少数が全国ワーストの2万1664人であり、改めて課題先進都市であることを市民全体が認識しました。今、このまちには早急にイノベーションを起こし、まちの活力を活性化することが何よりも求められています。
市政においても、この状況を甘んじて受け入れているわけではなく、昨年地方創生の新たなブランドイメージである「NewU新しいことを、はじめやすい都市」を打ち出すなど、まちの活性化に注力しています。
現在の状況において、民間組織である我々JCができることは何かと自問すれば、それは、新たなイノベーションを生み出す意識的基盤、また環境的基盤を構築することです。我々JCメンバー一人ひとりは社業においては、市内で精力的に経済活動をおこなう青年経済人でありますが、JCがおこなう運動とは目先の経済発展をめざすものではなく、より未来の状況において大きな効果を生み出す市民意識変革運動であり、青年経済人が考える次代の発展のために必要なものを、市民へと投げかけ、強い信念をもって共感を得るために運動を展開するものです。
まちのイノベーションを生み出す基盤として、私はダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)が何よりも必要だと考えます。ダイバーシティとは多様性、インクルージョンとは包容を表しており、昨今、多くの場面で必要性が語られるようになりました。D&Iとは全ての人種、性別、国籍、身体的不自由を含む多種多様な人々を平等に尊重し、意見を取り入れ、また、他者との違いによる不自由のない社会構造をめざす発展的な価値観です。そして、まちが求めるイノベーションとは、多種多様な人々との触れ合いの中からこそ生まれます。
D&Iを推進する上で、鍵となるのは、相互理解・相互尊重であります。自分と他者の違いを理解し、平等な同じ人間であると受け入れ尊重する意識が重要です。日本のD&I推進における意識の課題を如実に表しているものが、ジェンダー格差であります。SDGsへ積極的に参加する日本ではありますが、スイスの非営利団体である世界経済フォーラムが公表したジェンダーギャップ指数2021において日本は、対象国153カ国中121位と、他の先進国と比較して著しく低く、さらに、順位は2020年から下降しております。同じ国籍の男女間にすら格差のある現在の状況では、D&Iの達成は不可能といえます。
とはいえ、本市においては1975年より男女共同参画の取組をおこなっており、行政がこの問題を重視していることは、我々は深く理解しています。ですが、今ではジェンダーの問題にはLGBTQの概念も生まれ、さらに問題は複雑化しています。この問題を解決に導くには、民間からも強く市民意識に投げかけることが重要であり、それは地域市民の意識に密着する青年経済人の集まりであるJCこそが率先して取り組むべき問題です。まちの明るい未来を創出するために、我々から地域のD&I推進、そして、その問題解決の端緒と成り得るジェンダー平等をめざし、市民意識に訴えかける運動を展開してまいります。
子どもたちに未来選択を可能とする意識変化を生み出す
我々を含む地域社会全体において、子どもたちはまちの未来そのものであり、希望であります。彼らが、明るい未来に辿り着くことが、我々JCのめざす「明るい豊かな社会の実現」であり、子どもたちが夢を持ち、明るく笑って過ごせる未来を作り上げることは、我々地域社会全体の責任であります。
日本社会において、子どもたちの未来を想像すれば、おそらくは18歳で大学へ進学し、22歳の大学卒業後に就職をするケースが大部分となるでしょう。しかし、世界をみれば、義務教育を卒業後、いったん就職し、社会経験を積んで自分自身の将来の方向性を見つけた後に再び学生に戻り、学びたい分野の大学へ進学するケースが大部分です。それは、日本と他国の違いと言えばそれまでですが、しかし、新卒採用が有利な日本の制度の中では、他国流の学び直しは不利であり、子どもたちにとって現行制度が最適なのかは疑問が残ります。また、将来の方向性が定まらない中での大学進学は、学習意欲を減少させるものであり、延いては、日本社会の学力低下にも影響を与えており、制度変更の必要性も今後検討されるべきことだと考えます。
現行制度を今すぐに変えることはできませんが、義務教育期間の段階にて、我々が子どもたちに将来の在り方を見つける手助けをすることは可能です。地域の子どもたちに、大学進学を含めた将来への選択肢の多様さを示すことは、子どもたちの明るい未来に直結し、まちの未来へと繋がります。
また、現在、社会の在り方には、様々な思想が生まれています、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリ氏から始まった若者たちの自然回帰主義、前アメリカ大統領ドナルド・トランプ氏が提唱した世界の経済ナショナリズム、さらには、循環型社会経済、定常型社会、脱資本主義、反SDGs等々、思想は複雑多岐を極めております。
これから先、子どもたちが未来を見据え、迷うことなく学びを深め、自らが進むべき道を見出していくためには、多くの情報を得て学ぶ必要があります。そのためには、現代の情報化社会において、情報の中から有用なものや正確なものを見極めるメディアリテラシーを習得することが必須であり、さらには、取得した情報を分析し、物事の本質を捉える能力を磨くことが重要です。未来を作るのは子どもたちです。本年度は、子育ての中心世代である我々青年経済人が、率先して子どもたちの未来を選択する力の強化を図り、まちの明るい未来を構築してまいります。
民間外交から世界平和をめざす
JCの最終目標は、「恒久的な世界平和」です。目標を達成するためには、一緒にJC運動を起こしていく世界の同志が必要であり、我々はこれまで多くの世界との絆を繋いできました。JCI北九州には、台湾のJCI台北、スリランカのJCIウェラワッタ、韓国のJCI仁川富平、モンゴルのJCIインパクトという4つの姉妹JCがあり、全国においても極めて稀な国際交流が豊かな青年会議所であります。
国際交流において大事なことは相互理解・相互尊重の試みです。交流を通じて、世界の同志の精神性や価値観など、他者の在り方を形作っている文化や社会背景が何かということを理解し、尊重して認め合い、思いやることが国際交流の全てです。それは、我々のめざす世界平和に向けて非常に重要な考え方であり、相互理解・相互尊重こそ世界平和への第一歩であります。
JCI台北とは、毎年IFP事業をおこなっており、本年は53年目を迎え、先人たちが築いてきた運動は途切れることなく、現在まで受け継がれてきました。また、JCI仁川富平においても、これまで31回の相互公式訪問や様々な協働事業を実施しており、我々は国家主権を超えた友情で繋がっています。JCIインパクトとは、姉妹JCとなってから、まだ5年目ではございますが、相互公式訪問を含めた新たな交流方法を協議し、より発展的な交流をめざしております。
しかし、ここ数年間、新型コロナウイルス感染症により、我々は身体的に分断されました。直接会うという相互理解・相互尊重の重要な機会を失い、現在の状況は今後も継続する可能性があり、対面式の国際交流が、いつ可能になるか、まったくわからないという状況です。また、世界的にみても、これまで世界中で主流であったグローバリズムが薄まり、ナショナリズムの潮流が台頭してくるなど、国々は個々に分断されつつあります。
このような時だからこそ、メンバー一人ひとりが他国の情勢を想い、姉妹JCを想い、姉妹JCメンバーを想い、世界へと目を向け、何かできないかと模索することが必要であります。我々は北九州の民間外交の一翼を担う組織であります。本年度は、国際交流豊かな我々だからこそできる、国家主権を超えた民間外交から、世界の心を繋ぐ姉妹JCとの協働事業も視野にいれ、これまで以上の友情関係の構築をめざしてまいります。
また、北九州市には北九州空港滑走路の延伸など、世界に繋がる発展的な話題があります。昨年には、国土交通省より具体的な供用開始時期を2028年とする計画も出され、いよいよ現実的なものとなってきました。本市においては、2011年に発表した北九州市国際政策推進大綱2011より多文化共生都市の推進に取り組み、現在では他国の人々を受け入れる環境や制度は十分に進んでいます。JCI北九州では、これまでに本市と協力して多くの多文化共生事業を実施し、北九州が多文化共生都市として素晴らしい環境にあることを我々は熟知しております。
しかし、このような北九州市の多文化共生都市としての価値が、他国へ十分に発信できているとはいえません。実際に、北九州市における他国の人々が占める割合は、他の政令指定都市と比べて低く、ポテンシャルが十分に発揮できていないのが現状であります。
北九州市は課題先進都市であり、まちの明るい未来を実現するためには、現在の状態を大きく変化させるイノベーションを生むことが必要です。そのためには、原動力となる多種多様な人々の交流が重要であり、今以上に他国へ向けて本市の多文化共生環境を発信すべきです。コロナ禍であり、感染症対策に係る渡航制限下ではありますが、未来を見据えて運動していくことこそJC運動であります。世界に誇れる北九州の多文化共生都市としての価値を発信するため、我々から行動を起こしてまいりましょう。
JAYCEEとなるための意識教育を
JAYCEEとなるために必要なものを問われれば、その答えは、JCICreedにあります。世界には約170,000人のJC運動に邁進する仲間がおり、我々を繋いでいるただ1つの絆はJCICreedです。中でもJCICreedに刻まれている「service to humanity」(人類への奉仕)が示すものは、「暗闇のなかで社会を照らす先駆けとなり、利他の精神を持ち、世のため人のために活動することが人生最大の使命」であり、JC運動をおこなうJAYCEEの意識は、ここにこそあるべきです。
また、JCには年齢制限が存在します。それは組織の新陳代謝を高め、常に新しい発想からの事業構築を可能とするためです。かぎられた在籍期間で、最大効率にて運動へ邁進するためには、まず、JC運動における方向性を見失うことがないよう、JCICreedを理解し、各々のメンバーが、真にJCICreedの実践者となることが何よりも重要であります。
JCI北九州には、先人たちが築いてきた多くのJC運動があります。とりわけ、わっしょい百万夏まつりや、到津の森公園支援事業などは、その代表例であります。本年度、わっしょい百万夏まつりは35周年を迎え、到津の森公園は開園20周年を迎えます。入会して初年度のアカデミーメンバーには、JCI北九州の代表的な2つのJC運動へ参画してもらい、当事者意識の醸成、加えてJCの理念から生まれた運動を体感することで、JC運動の意義を自身から見出してもらいます。さらに、室会議にてアカデミー研修を実施し、LOMの歴史や創立時の想いを学び、JCI北九州メンバーとしての帰属意識の醸成をおこない、まちづくり組織としての運動力の向上も図ってまいります。本年度のアカデミー委員会は、メンバーが今後のJC運動において方向性に迷うことのなく邁進できるよう、地域のリーダーとしての素地を築くことをめざし、青年の学び舎として確立させてまいります。
結びに
新型コロナウイルス感染症により世界は変わりました。今、世界は、国と国、地域と地域、人と人、全てが分断されつつあります。我々がめざす明るい豊かな社会へと、このまま進み続け、辿り着けるのでしょうか。人類は、今後の世界の在り方を決める新たな局面にいます。未来への分岐点を変える多くの選択肢が我々の眼前にあります。めざす未来に辿り着くには、最良で最善のものを選ばなければなりません。
先の見えない困難な時代です。だからこそ、「まちの未来を想うのならば、我々JCから変革を起こさなければならない、そしてJCならば変えられる。」、そのような尊大で、傲慢な、青年らしいまちを想う強い信念を持ち、市民や行政へと訴えかけ、変革の機運を高めてまいります。我々が迷うことなく、ひたすらに信念を貫きJC運動を続ければ、必ず想いはまち全体へと届き、明るい豊かな社会への大きな変化を生み出せます。
新たな世界で、未来のために、今ここから、変革を起こしてまいりましょう、誰よりも人を想い、誰よりもまちを想い、誰よりも奉仕と利他の精神が溢れるヒーローとなって。
2022年度運動方針
1、誰よりもまちを想うヒーローとなるため、自身の内面を強化しよう。
2、JCI北九州の組織力を強化しよう。
3、まちと組織双方のD&Iを推進しよう。
4、世界平和を目指す国際交流豊かなJCとして、世界へと運動を展開しよう。
5、まちの未来を担う次代の意識を強化しよう。
理事長プロフィール
氏名 | 藤井 栄太(ふじい えいた) | |
勤務先・役職 | 株式会社 アポロサービス 代表取締役 | |
生年月日 | 1982年(昭和57年)11月2日 | |
趣味 | 音楽鑑賞 | |
血液型 | A型 |
理事長北九州JC歴
2013年 | 入会 アカデミー第2委員会 委員 | |
2014年 | 台北交流委員会 委員 | |
2015年 | 広報戦略委員会 幹事 | |
2016年 | 国際交流委員会 委員 | |
2017年 | 事務局 委員 | |
2018年 | 国際交流委員会 委員長 | |
2019年 | 民間外交推進室 副室長 | |
2020年 | 持続可能な地域推進室 室長 | |
2021年 | 副理事長 |
理事長出向歴
2014年 | 福岡ブロック アカデミー第三委員会 委員 | |
2016年 | 日本JC 世界に貢献する日本創造会議 第5小会議 小幹事 |