理事長所信

一般社団法人 北九州青年会議所
第67代理事長 野上 裕貴

はじめに

JCに入会して、私は様々な「景色」を見てきました。
入会してまもなく、海岸での事業に参加したときは、雲ひとつない夏の青空を見ました。自信を持って作成した事業計画書が会議で認められず、一からやり直しになったときは、たしかに目は開いているのに目の前が真っ暗になる、という不思議な光景を見ました。委員長として挑んだ事業が無事に終わったときには、自然とあふれ出る涙でぼやけた会場と笑顔の委員会メンバーを見ました。
もちろん今日からすれば過去の出来事ですが、見た景色のその時々には、楽しい、悲しい、そして嬉しい「今、その瞬間」がありました。そして、そのときそのときの「今」の積み重ねが、まさに「今」生きている私を形作っているのだと実感しています。
北九州JCは、創立して今年で66年を迎えます。私たちが北九州JCとして、誇りを持って活動を行えるのは、先人たちが積み重ねてきた運動の「歴史」とその成果であることは言うまでもありません。他方で、JC運動の本質は「市民意識の変革」にあり「変革」とは、より良い「未来」を目指す運動に外なりません。
では「歴史」に支えられ「未来」へ向けて運動を展開する私たちがすべきこと、私たちにしかできないことは何でしょうか。私はJAYCEEとして「今」を懸命に生き、不断の努力を行うことに尽きると確信しています。「今」を懸命に生きずして「今」努力せずして、「歴史」を活かすことも、「未来」を創ることもできないのですから。
私たちJCは、我がまち北九州の「今」を直視し、JCが今やるべきことは何かを徹底的に考え抜かなければなりません。そして何よりも、私たち青年は過ちを恐れず、勇気を持って行動しなければなりません。
私たちには、JCで出会い共に汗を流し共に語り合い、互いに背を預けられる仲間がいます。先人達が紡いでくれた歴史と伝統を最大限に活かし、明日の北九州へ確かな一歩を届けるために、かけがえのない「今」を共に歩みましょう。

2019年度の事業方針

(1)人口減少を見据えた、市民の問題意識を高める ~未来の市民のために、今考え、行動しよう~

まちの課題を考えるとき、避けて通れないのが人口問題です。人口はまちの活力に直結しますが、北九州は人口減少が顕著であり、北九州JCが真正面から取り組むべき喫緊の課題であると考えます。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」によると、日本の人口は40年後には9000万人を下回り、約100年後には5000万人ほどになってしまいます。人口問題は、明日何かが急激に変わるというものではないが故に、「知識としてはわかっていても実感が湧きにくい」問題です。
わがまち北九州市は、全国トップクラスの人口減少数を記録しています。私たちはこのような現実を見据え、人口が大きく減少し少子高齢化が今よりもさらに進んだ後に、まちがどのような社会を目指していくのかを市民一人ひとりが考え、来たるべき未来の人口減少社会においても、明るい豊かなまちであり続けるためのグランドデザインを描く必要があります。
その第1歩として、まずは市民が人口問題の実態を知る機会を提供します。市民一人ひとりが、「次世代の市民のため」に、まちはどのような対策を講ずるべきかを様々な観点から広く深く議論するための素地を創出したいと考えています。

(2)JCにしかできないインバウンド拡大を
国家レベルでの人口減少が問題となる中、まちの活性化の有効な手段となるのがインバウンドの増加推進です。
観光産業は、旅行業、宿泊業、輸送業、飲食業等を横断する極めて裾野の広い産業であり、人口の自然減・社会減によって生じる地域経済の縮小を、観光交流人口を増やすことで補完することができます。
外国人が何を目的として日本を訪れているかは、国や地域によって様々です。日本人にとっては日常生活の中で気にも留めない、当たり前のサービスや製品でも、外国人にとっては新鮮さを感じたり、高く評価されたりするものも多くあります。
私たち北九州JCは、まちづくりを通じて、北九州の魅力を熟知していると同時に、長年にわたる国際交流事業を通じ、組織として、外国人との交流や相互理解が進んでいるという強みがあります。
このような強みを活かして、北九州JCにしかできないインバウンドの拡大を推進しましょう。

(3)KDSを「未来のリーダーの登竜門」へと昇華させる
2005年からスタートした北九州ドリームサミット(以下「KDS」)は、2019年で15年目を迎えます。KDSは、志とポテンシャルの高い中学生が集う場であり、彼らは将来の北九州、ひいては日本のリーダーとなる可能性を秘めた子どもたちであることを忘れてはなりません。
KDSはそのような中学生たちのために、彼らがまちや国の未来に思いを馳せ、未来のリーダーとして自身の将来に対し、さらに大きな志を持てるきっかけとなるような「原体験」を提供する機会であるべきです。
2019年度は、これまでのプログラムにとらわれることなく、どうしたらKDS議員一人ひとりの心に「革命」を起こせるか?を真剣に考え、議論し、KDSを「未来のリーダーへの登竜門」へと昇華させてまいりましょう。

(4)国とまちの未来を考える
2019年は、2月に北九州市長選挙及び県議会議員選挙が開催され、さらに7月には参議院議員選挙も開催される、「選挙イヤー」です。
すなわち2019年は、市民一人ひとりが私事から心を放ち、どのような政策を採ればまちや国全体がより良くなるかを考え行動する絶好の契機なのです。
しかし、10代20代の投票率低下は全国的に顕著です。若者の投票率を向上させないことには、民主国家の根幹をなす民主主義が揺らいでしまうこととなります。10代20代に、どのような政策を採ればまちや国全体がより良くなるかという問題意識をもってもらい、その発露として投票に行ってもらうことが必要です。
北九州JCは、2016年度から、若者を対象とした政治への参画意識を向上させる取り組みを行ってきました。
2019年度は、多くの選挙の機会を通じて、若者に政治に対する関心を持ってもらうことで、民主主義の増進に寄与します。

(5)恒久的世界平和に寄与する、真の国際交流の実現
昨今の国際情勢は、グローバル化が進む反面、欧米においては保護主義・ナショナリズムが台頭しており、混沌とした状態が続いています。しかし、そんな今だからこそ、私たちはJCIが掲げる恒久的な世界平和の実現に向けて、草の根的な民間外交を推進していかなければなりません。
国家外交の対立概念である民間外交において、私が重視したいのは個と個の友情です。今年は、台北JCとの協働事業であるIFPが50周年の節目を迎える年です。台北と北九州の子どもたちの間に育まれてきた個と個の友情は、国を超えた「他者を思いやる心」そのものであり、台北や日本の平和が脅かされる事態となったとき、必ずや平和に寄与するものとなるでしょう。本年度は、改めてIFPがアジアの民間外交に果たす意義を皆で共有すると共に、これまで育まれてきた台北と北九州の子どもたちとの個と個の友情をさらに強固なものにする機会を創出します。
2018年度、仁川富平JCとは姉妹締結30周年を迎え、シスター会議では今後の交流の方向性が議論されました。本年度は30周年を迎えた両LOMの友情がますます発展するよう、協働事業の構築も視野に入れ、より密接な交流を目指します。
インパクトJCとは、2018年度に姉妹JCが締結されました。2019年度は、姉妹関係を今後どのようにして発展させていくのか様々な可能性を模索し、両LOMの姉妹関係が、両LOMにとってプラスになる今年度の交流内容と交流の方法を確立していきたいと考えています。

(6)JCの「原点にして頂点」を体感する
「青年の学び舎」と称される青年会議所において、新入会員への教育は今も昔も最重要課題のひとつであり、私たちは常にアカデミーメンバーに対する教育の「質」を追求する必要があります。
アカデミーメンバーは、JAYCEEとしては新人であっても一人前の社会人であり、ただJAYCEEとしての必要な知識やプログラムを「伝える」だけでは、アカデミーメンバーの心に響くことはありません。アカデミーメンバーにとって最も身近な「先人」である私たちが、常に背中を見せ続け、アカデミーメンバーの模範となることこそが、最も効果的な教育であると考えます。
またJCに身を置く私たちが自己を成長させる最大の機会は、私たち自身が仲間や市民と共に作り上げる事業です。これはアカデミーメンバーも例外ではありません。2019年度も、アカデミーにはわっしょい百万夏まつりと到津の森公園支援事業を担当していただき、両事業に流れる北九州JCの精神性を、事業活動を通じて学んで頂きたいと考えています。特に到津の森公園においては、北九州JCが誘致した象であるサリーとランが来園40周年を迎えます。かかる節目の年を、アカデミーメンバーにとって北九州JCの創始の精神を学ぶ契機とすると共に、到津の森公園の支援意識を市民に持ってもらうためにはどのようにしたらよいか、という課題を通じてアカデミーメンバーが事業構築の基礎を学ぶ機会とします。

(7)「作り手と受け手の真剣勝負の場」としての例会の確立
私たちがまちのリーダーとなって市民変革運動を行うためには、心意気だけでは不十分です。まちの課題、人の心の動かし方、事業構築の方法等様々な事柄を学び、まちのリーダーとしての能力を高めなければなりません。
例会は、メンバーが一同に集う唯一の場です。かかる例会の特性を活かし、私は例会をメンバーのJAYCEEとしての素養を底上げする機会としたいと考えています。もっとも、JCは学校のように教えを授ける側と授けられる側が固定化しているわけではなく、メンバー相互の切磋琢磨によって自分たちのレベルアップを多角的に図らねばなりません。そのような観点から、私は例会のコンテンツは月ごとに各委員会が担当し、メンバー全員が学びの提供者であると共に受信者であり、各月の例会が学びの提供者と受信者との真剣勝負の場となるようにしたいと考えています。

(8)メリハリとスピードを兼ね備えた意思決定システムとしての会議改革
JCの意識決定の根本は議案と会議にあります。しかし、時として精緻で慎重な意識決定システムが効果的な事業実施を阻害し、外部の信用を失うことにつながることもあります。また、限りある会議の時間は議論すべき点にフォーカスして効果的に利用すべきであり、会議の種類に合わせた適切な論点整理とその整理に基づく集中審理が必要です。
2019年度の会議運営は議案ごとに明確な区別を行い、スピード感をもって決定しなければならない事項については、適切な権限委譲によって迅速な意思決定を実現します。
また会議運営に関しては、会議の設営やアジェンダのアップのみではなく、各会議の段階毎に各議案の論点を整理し、その論点に対して集中的な協議、審議ができるような会議を目指します。

(9)潜在的なパートナーシップを活用した広報戦略の確立
LOMが伝統的に抱える課題のひとつに、発信力の弱さが挙げられます。私たちが運動を伝播させようと独力で広報活動を行っても、マンパワーや限りある予算の元では、限界があるのが実情です。
また、インターネットやSNSの発達により、情報を不特定多数にリーチさせることが容易になった反面、ただ漫然とWEBで発信するだけでは、情報の海と化しているインターネットの世界で埋没してしまうことは必定です。
そこで2019年度は、事業毎に影響力のある個人、メディア、他団体等とのパートナーシップを積極的に活用した広報戦略を実施したいと思います。LOMには、外部出向による様々な団体とのつながりや、メンバー個々人が有しているマスコミや役所の幹部職員、インフルエンサーとのコネクションが間違いなく存在しますが、情報が散逸しておりLOMの広報に十分生かし切れていないのが現状です。
2019年度は、そのような「つながり」を活きた情報として集約し共有した上で、各委員会がLOMのコネクションを最大限に生かして担当事業の広報戦略を立てることの出来る環境を確立します。

(10)まちのリーダーの原石をスカウトする
LOMの組織としての力は、メンバー数とメンバーの能力に大きく影響されます。北九州には、私たちがまだ出会っていない、若しくは出会ってはいるが意識していないまちのリーダーとなる可能性を秘めた「原石」である青年が数多く潜んでいます。
私たちは、一人ひとりがまちのリーダーを発掘する「スカウトマン」になったつもりで、常日頃からアンテナを張って、会員拡大を成功させなければなりません。
近年、会員の能力が内外から問題視されている現状を鑑み、ただ会員数を増やすことだけを目的とし、社会人として当然有するべきモラルやマナーを欠いた人にまで入会の門戸を開くのは会員拡大運動は不適切です。しかし他方で青年会議所運動は、社会開発活動を通じた人材開発でもあり、入会前の能力を殊更に求めることも青年会議所運動にそぐわないのです。
LOMのメンバー一人ひとりが正しい会員拡大意識を持ち、LOMの力をさらに進化させてまいりましょう。

未来へのビジョン

北九州には様々な課題を抱えています。今日明日の取り組みでは、解決の難しい問題もあります。
しかし、まずは私たちJAYCEEが、市民意識変革運動の旗手として誇り高く、懸命に「今」を生きることができれば、それはわずかであっても確実に「明日」を動かすことができるものと確信しています。
そのような「今」と「明日」の繰り返しが、やがては大きな変化をもたらし、明るい豊かな北九州の実現への繋がるのです。
少しずつでいい。「今」を大切に、確実に歩を進めてまいりましょう。私たちが大好きな北九州のために。

2019年度運動方針

・国とまちの未来を考える市民意識を醸成しよう
・JCにしかできないインバウンド増進を実現しよう
・子どもたちに、心揺さぶる「原体験」を届けよう
・恒久的世界平和の実現を意識した国際交流を推進しよう
・ルーティン的思考を廃し、動的な組織運営を行おう
・「背中を見せる」アカデミー教育を実践しよう

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